開業まであと2年

あったかい

「タクシーのことを何も知らない自分の背中を押してくれた。あったかかったんですよ」
当サイトをそう評してくれる有限会社カープタクシーの乗務員 脇田信二さん(45)は、個人タクシーの開業を目指している。脇田さんには、他社で20年のバス乗務経験がある。個人タクシー開業のための法人タクシー勤務の要件は、その年齢からして「2年以上」だ。

応援する理由

一般的に、タクシー会社は社員が独立し個人タクシーを開業することを嫌う。個人タクシーを開業できる人は、長期間にわたり無事故無違反を継続できて稼ぐ力もそれなりにある優秀な社員であることが多く、その優秀な社員がせっかく育ったところで辞め個人事業者としてライバルになるのは好ましくない、という偏狭な考え方だ。しかし、見方を変えれば、安全を何よりも優先すべきタクシー会社にとって、個人タクシー開業希望者を雇用するということはすなわち、期間限定ではあるが無事故無違反を強く意識した良い人材を雇用できるということになる。したがって、当社では個人タクシー開業希望の方を歓迎するスタンスをとっている。

脇田さんに個人タクシーを目指す理由、応募の時の心境、入社後の感想を聞いてみた。

転職の理由は?

このままじゃまずい

転職を考えたのは1年前。もともと大手のバス会社にいましたが、上司の知り合いがバス会社を立ち上げる際、立ち上げの手伝いをしてやってくれないかということで大手から新規のバス会社へ転籍しました。立ち上げ当初は社長も「将来は会社を大きくして」という夢があったみたいですが、もうけを見て現実路線になり、ちゃんとしたバス会社にする考えではなくなっていったように思います。転職の決め手は、前の会社の社長に「もし自分が倒れて乗務の仕事ができなくなったら、乗務以外のポストはありますか?」と聞いたとき「ない」と回答されたこと、それから「今の収入を10年後も維持できますか?」と聞いたとき「できない」と明言されたことです。バス会社を新規に自分で立ち上げることも考えましたが、冒険しすぎだと思いました。

家庭を大事にしたい

将来のこと、自分にできることを考えたとき、20年バスをやってきましたから、当然同じ運転の仕事を思いつきました。トラックは不規則で家族を犠牲にすることも多いのではないかと思い候補外に。若い時から家内には迷惑をかけてきましたので、一番は家庭を大事に考えました。バスは泊りがあれば不規則になります。家内が病気をしたとき、貸切バスのツアーの仕事で家にいてあげられない時間があった。父親が亡くなった時はツアーで東京へ向かう途中で兵庫県で連絡を受けましたが、お客様をおいて引き返すわけにはいかないですから葬式に出られなかった。タクシーならそんなときも対応ができますが、タクシーは転職先としてノーマークでした。

きっかけは豪雨災害

できることが見つからない中で出会ったのが、2018年7月の豪雨災害で止まったJRの代替運行に臨時便を出していた古巣の大手バス会社です。臨時便のドライバーとして応援に来ていた個人タクシー事業者からタクシーの話を聞き「これもありかな」と。情報を集めてこれならいけると判断し家内に相談しましたが、「あなたはバスが天職」と最初は反対されました。しかし、業界や広島交通圏の地理の勉強をしたり、知り合いになった個人タクシー事業者からもらった資料を使って勉強をするうち、家内も本気だと認めてくれました。

カープ入社への道のり

どの会社を選ぼう?

自分はこういう性格なので変なタクシー会社には行きたくない。個人タクシーの人にも評判を聞きました。実はカープについては、「あそこはだめよ。個人タクシー向けの情報、なんも出しとらんけえ」と言われました(笑)(編注:実はトップページ「よくある質問」に個人を目指すキャリアパスに触れています)。次に考えたのは、自分がバスをやっていましたから、バスを運行しているタクシー会社なら安全面や教育はしっかり対応しているだろうということ。そこでバスもあるタクシー会社のうちハートマークを取得している数社で名の知れたところに絞り天秤にかけました。ネット上の情報収集でカープタクシーの採用サイトを見つけたとき「あ、ここ!」と思いました。あったかかったんです。背中を押してくれたんです。タクシーのことを何も知らない自分の背中を。家内にも見せたら興味を持ってくれました。

拍子抜け

カープタクシーに電話したときはダメもとでした。個人タクシーの人に「あそこは個人希望は募集していない」と教えられていたからです。自分の性格からして、カープには入りたいけど踏ん切りをつけて他社に連絡するためにカープタクシーの人から「個人タクシー希望は無理です」という言葉を聞きたくて。そしたらウェルカムな雰囲気で拍子抜けしました。面接の予約を取りつけ行ってみると、面接会場に黒服が4名ズラリと並んでいました。しかし、並んでいる人たちがふんぞり返っていない、偉そうにしていない。顔が見えない中でのホームページのあったかい印象でしたが、実際会ってみて「ああ、これがホームページのあったかさに現れていたんだな」と思いました。入社して研修を受けてみて、ここを選んで良かったと思っています。

脇田さんの目標

無事故・無違反

個人タクシーの開業を目指すので、もちろん無事故・無違反です。13年前、母親が2トントラックにはねられて亡くなったことも影響しているかもしれませんが、自分は異常なほど安全に対して執着するんです。バスでもそうでした。それから、経験を積んで地理やタクシーの流し方を覚えることと、自分の客を作ることです。