今回は、大手の宅配会社からタクシードライバーへ転職し、今は内勤として営業部に所属する武岡秀樹さん(48・取材時)にお話を聞いてみました。

なぜ転職したんですか?

宅配の現場の将来への不安

前職では、日本を代表する大手の宅配の会社に20年勤務していました。就職当初の宅配業界は時間指定もなくゆとりがあって、楽しさもありましたが、近年は2時間刻みの時間指定のせいで朝から晩まで時間に縛られ取扱い個数も増えたため、四六時中何かに追われている感じがしていました。また、宅配は年齢的な限界もあって、若い者と同じようにこの先同じことは続けられないと、将来に不安を感じていました。そんな頃、Amazon問題で現場が疲弊し始め、辞め時かなと思いました。

なぜタクシーを選びましたか?

辞めようと思ったときは、転職したい職業は決めていませんでした。同じ宅配会社を一足先に辞めた同僚がタクシードライバーに転職していて、タクシーの話をちょくちょく聞いていましたが、実は父親がタクシードライバーだったので同じ仕事はしたくなく、あえてタクシーは選択肢から外していました。

しかし、結局、元同僚が2名カープタクシーに転職していたのがきっかけで、カープタクシーに決めました。きっかけは同僚の転職でしたが、とにかく宅配が嫌で嫌で辞めたいというのが先でした。そう思っている宅配ドライバーはたくさんいますので、タクシーのほうが楽しくて給料も変わらないということにみんな気づいてくれるといいんですけどね。

転職してみてどうでしたか?

仕事が楽しく気が楽

まず、仕事が楽しいし、気が楽です。これが宅配と比較した時の一番良い所です。ドライバー職をしようと決めた人は、次に貨物か旅客か迷うと思うんですけど、宅配を選ぶ理由は「人間と違って荷物はモノを言わんけえ気が楽じゃろう」ということなんです。でも実はその考えは間違いということが、やってみて初めて分かります。1時間でこなさないといけない仕事の件数が、宅配は20件以上あるとするとタクシーは多くて3~4件で気が楽ですし、宅配のほうが気苦労が多くクレームは会社ではなくドライバーに直に来ます。それに、タクシーは縛りが少なく自分のペースでできるっていうところがいいですね。

給与は変わらない

給与面では、宅配は配っても配ってもインセンティブは知れていますが、タクシーは仕事した分給料が明確に増えていくのが面白いです。

しっかり休める

しっかり休めるのも宅配との違いですね。タクシーは1日おきの出勤で休みが多いし、急な予定が入っても休みがとりやすいです。宅配の場合は休むと誰かが代わりにシフト外で出勤しなければならず、仲間に対し非常に申し訳ない気持ちになります。休みと言えば、タクシードライバーになって、休日を気兼ねなく楽しめるようになりました。宅配の時は、特に中元・歳暮の時期、休日も翌日の仕事のことが気になっていましたが、タクシーの仕事はその日限りなので、休みの日に仕事のことを考えなくていいんですよ。あえて仕事で考えることがあるとすれば、せいぜい「明日雨が降ったらお客さん多いのにな」ということくらいですかね(笑)

快適な職場環境

職場環境も、タクシーは車内のエアコンが効いていて夏涼しく冬暖かいし、雨に濡れない。実は、宅配トラックはドアの開閉が多くエアコンの意味がありません。タクシーはお客様が快適なように室温調整しなければならないので、ドライバーも快適。それから、今時チップがもらえる職業はタクシーくらいしかないんじゃないでしょうか?毎日の昼食代くらいはもらえます。現場の雰囲気がピリピリしていないのもタクシーの良い所です。宅配もタクシーも出庫すれば一人になる仕事で同じように見えますが、宅配は決められた量の荷物をチームで分担するため、自分のペースが悪いと仲間に迷惑がかかり申し訳ない気持ちになるし、相手は相手で面倒かけやがってという気分になり、人間関係が難しくなります。不在で引継ぐ仕事にも気を遣います。タクシーでは、そんなしがらみが全くありません。宅配でストレスを感じている人にはお勧めの転職先です。雨が降るとウキウキします!

サヨナラ不在連絡票

タクシーも約束の時間より遅れて玄関に出てこられるお客さんがいてやきもきすることはありますが、宅配の異常な量の不在に比べたら大したことなく、まったく気になりません。宅配だと「不在で連絡を受けて指定時間に行ったのに、また不在」がありますしね。

昼ごはんを食べる時間がある

タクシー乗務をしていた1年半は本当に楽しく、ニコニコ仕事をしていました。同じ職場からカープタクシーへ転職した4人も同じ感想を言っています。悩みは、きっちり休憩が取れてご飯が食べられるので、少し太ったことですね(笑)宅配では就業中にご飯を食べる余裕はありませんでした。

どういったきっかけで内勤に?

突然の呼び出し

1年半乗務したある日、突然仕事中に本部から呼びだしがあり、クレームでもあって怒られるのかなと思って向かったら、内勤への転属の打診でした。タクシードライバーに転職した当初、将来のプランは考えていませんでした。とにかくタクシードライバーの毎日が楽しく、また先輩に年配の方が多かったため、宅配と違って歳をとってもこのままドライバーを続けられるんだと思っていましたので、想像もしていなかった内勤を打診されて最初は戸惑いました。

タクシー乗務が楽しかった

お客様へ行き先を聞くときのワクワクとか、行き先が長距離だったときの宝くじを当てた感覚、お客さんと会話が弾んだ時のこと、けっこうもらえるチップ、宅配にはない時間の余裕、一月に最低1回はある3連休、めんどくさくない社内の人間関係など、転職してタクシー乗務がほんとうに楽しかったので、実はまだタクシー乗務に未練があります。

新しいステージで勉強中

いまは内勤で「何でも屋」をしており、日々勉強中です。営業所長の管理業務の手伝いのためのデータ管理や資料作り、営業の外回り、ホテルの営業会議への出席、貸切タクシーやハイヤーの受注などのほか、たまに配車のオペレーターの手伝いもします。入社して2年ちょっとですが、会社の全体像や業界のことが分かってきて、吸収することが多く楽しくもやりがいの感じられる毎日を過ごしています。

今後の目標は?

この会社では、転職で初めてドライバー職に就く人や、自分と同じように貨物の世界から転職する人がいて、また、最近は新卒の採用にも成功していますので新社会人など、いろんな方をお迎えすることになります。多様な人が居心地よく働きやすい環境を作れるよう、内側から支えていきたいと思っています。
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